青藍洞窯

青藍洞窯 川手敏雄


川手敏雄

昭和50年(1975年)の初夏のこと、三年間務めたサラリーマンを辞めて家の裏山に登り窯を築いた。
事業を始めるからと失業保険の手続きもしないで、焼き物で食べていこうと考えた。
その年の3月に長女が生まれていた。
今なら考えられない無謀さだ。
近くに登り窯を構えるM先生の紹介などで旅館の食器などを焼いたが、とても食べて行くほどの収入ではなかった。
サラリーマン時代の蓄えや実家の父からの結婚祝い金なども底をつく。
年末に名古屋の加藤唐九郎先生に弟子入りの手紙を書いた。
会ってもらえるかどうかもわからなかったが兎に角若かった。

幸いに年が明けた正月「弟子入りの件はともかく、一度お出掛け下さい」と重高先生の奥様からのあたたかい返事がもらえた。
雪の降った朝に翠松園のご自宅に伺うと唐九郎先生、重高先生ご夫妻が出迎えて下さった。
私はすでに26歳になっていた。
「26歳になってからの弟子入りは無理」
と断られたが、お会いできて本当に良かった。

弟子入りはダメとのことでとりあえず失業保険の手続きに職安に通った。
そこで瀬戸の窯業高等職業訓練校のことを知った。
ここに入ることができれば1年間は失業保険と訓練手当がもらえるとのこと。
向こう一年間は食いつなげると思った。

家内の親父さんにも窯業訓練校の面接に行ってもらって何とか滑り込むことができた。

入校が決まらない2月の中頃か3月の初め頃だったと思う。
何とかならんかと登り窯を焚いていた深夜にイルカの「なごり雪」がラジオから流れてきた。
この時の登り窯は自宅の裏山にあり、周りは真っ暗。
裸電球の明かりが侘しくともる中で、一人、窯を焚いていた。
そんな真夜中に雪が舞ってきた。
登り窯に限らず薪で焚く窯は思ったように温度が上がってくれない。

真夜中に泣きたくなるようなときに聞いた「なごり雪」。
今でもこの曲を聞くと、あの時のことが思い浮かぶ。
そしてこの私にとって忘れてはならない思い出でもある。
私の焼き物人生の原点がここにあった。

訓練校時代に休日になると翠松園を訪ねた。
弟子入りの許しが出たのは半年後だった。
妻や長女を呼ぶための準備もあり正式に内弟子に入れたのは手紙を書いてから一年近くが過ぎていた。

あれからもう四十数年がたつ。
唐九郎先生ご夫妻も重高先生ご夫妻ももうこの世にはおられない。
思考錯誤しながらもやきものづくりが続けられるのは唐九郎先生、重高先生のおかげである。

毎年、年の暮れになると「今年も焼き物で飯が食えた」と今でも感慨深い。
唐九郎先生、重高先生、奥様に心より感謝申し上げております。
また日ごろお世話になっている創造館の皆様、陶芸関係の皆さまに深く感謝申しあげます。
ところで・・・イルカの「なごり雪」今でも私のカラオケの18番です。

 〒399-2222
 長野県飯田市千代1096
 青藍洞窯 川手敏雄
 電話:0265-59-2016
 携帯:090-5582-7229
 mail:info@seirandou.net  

プロフィール

1949(昭和24)年4月 埼玉県羽生市に生まれる
1968(昭和43)年3月 埼玉県立行田工業高校機械化卒
1972(昭和47)年3月 関東学院大学工学部工業化学科卒
1972(昭和47)年4月 盟和産業(株)入社
1975(昭和50)年7月 盟和産業(株)退社し飯田市に登り窯築窯、加藤唐九郎・重高両先生にお会いする
1976(昭和51)年4月 愛知県瀬戸窯業高等訓練校入校
1976(昭和51)年10月 加藤唐九郎先生、重高先生に師事、内弟子に入る
1978(昭和53)年3月 飯田市千代に戻り独立、作陶生活に入る
1979(昭和54)年 伝統工芸新作展・第三文明展に入選
1980(昭和55)年 中日国際陶芸展初入選・朝日陶芸展奨励賞
1981(昭和56)年 伝統工芸新作展入選
1981(昭和56)年 長野県飯田創造館個展
1981(昭和56)年 松本 信濃ギャラリー個展
1982(昭和57)年 東京赤坂 乾ギャラリー個展
1983(昭和58)年 名古屋 ギャラリー住恵個展
1984(昭和59)年 浦和伊勢丹 個展
1985(昭和60)年 日本橋高島屋 信濃梓会陶芸展
1985(昭和60)年 浦和伊勢丹 第二回個展
1986(昭和61)年 第二回 日本橋高島屋 信濃梓会陶芸展
1986(昭和61)年 上田西武 陶9人展
1987(昭和62)年 第二回 長野県飯田創造館個展
1987(昭和62)年 浦和伊勢丹 第三回個展
1988(昭和63)年 伝統工芸新作展入選
1988(昭和63)年 横浜旭ギャラリー個展
1989(平成1)年 伝統工芸新作展入選
1989(平成1)年 第三回 長野県飯田創造館個展
1989(平成1)年 浦和伊勢丹 第四回個展
1990(平成2)年 第四回 長野県飯田創造館個展
1990(平成2)年 浦和伊勢丹 第五回個展
1990(平成2)年 有楽町西武アートホーラム 唐九郎一門展
1990(平成2)年 西武沼津店 唐九郎一門展
1991(平成3)年 ピサ・福岡店 唐九郎一門展
1991(平成3)年 浦和伊勢丹 第六回個展
1992(平成4)年 ベルシャインニシザワ 個展
1992(平成4)年 自宅にて青藍洞窯展
1993(平成5)年 浦和伊勢丹 第七回個展
1993(平成5)年 横浜旭ギャラリー・飯田アートハウス 土鍋展
1994(平成6)年 浦和伊勢丹 第八回個展
1994(平成6)年 第五回 長野県飯田創造館個展
1994(平成6)年 横浜旭ギャラリー個展
1994(平成6)年 滋賀県立 陶芸の森にて9ヶ月間の研修
1995(平成7)年 浦和伊勢丹 第九回個展
1995(平成7)年 自宅にて青藍洞窯展
1996(平成8)年 浦和伊勢丹 第十回個展
1996(平成8)年 日本橋高島屋 木と陶展
1996(平成8)年 自宅にてフリップ・リーチ夫妻と3人展
1997(平成9)年 浦和伊勢丹 第十一回個展
1998(平成10)年 横浜旭ギャラリー個展
1998(平成10)年 浦和伊勢丹 第十二回個展
1999(平成11)年 飯田市美術博物館個展(新しい光とかたち)
1999(平成11)年 日本橋高島屋個展「川手敏雄うつわ展」
1999(平成11)年 浦和伊勢丹 第十三回個展
1999(平成11)年 横浜港北東急 個展
2000(平成12)年 飯田市平安堂 個展
2000(平成12)年 第二回日本橋高島屋個展「川手敏雄うつわ展」
2000(平成12)年 浦和伊勢丹 第十四回個展
2000(平成12)年 第二回横浜港北東急 個展
2001(平成13)年 第三回日本橋高島屋個展「川手敏雄うつわ展」
2001(平成13)年 川手敏雄ホームギャラリー展
2002(平成14)年 浦和伊勢丹 第十五回個展
2002(平成14)年 第二回川手敏雄ホームギャラリー展
2003(平成15)年 第四回日本橋高島屋個展「川手敏雄うつわ展」
2003(平成15)年 横浜高島屋個展
2003(平成15)年 熊谷 八木橋デパート個展
2004(平成16)年 浦和伊勢丹 第十六回個展
2004(平成16)年 飯田市キング堂 個展
2005(平成17)年 第三回川手敏雄ホームギャラリー展
2005(平成17)年 熊谷 八木橋デパート第二回個展
2006(平成18)年 第四回川手敏雄ホームギャラリー展
2006(平成18)年 浦和伊勢丹 第十七回個展
2007(平成19)年 第二回飯田市美術博物館個展「美術館に花を咲かそう展」
2007(平成19)年 第五回川手敏雄ホームギャラリー展
2007(平成19)年 高島屋新宿店 個展
2007(平成19)年 松本井上百貨店 個展
2008(平成20)年 第六回川手敏雄ホームギャラリー展
2008(平成20)年 第五回日本橋高島屋個展「川手敏雄うつわ展」
2008(平成20)年 熊谷八木橋デパート 第三回個展
2009(平成21)年 名古屋松坂屋 信州の工芸家たち展
2009(平成21)年 小諸高原美術館 日韓陶芸展09
2010(平成22)年 韓国霊岩陶芸博物館 韓日陶芸交流展招待出品
2011(平成23)年 第三回飯田市美術博物館個展
2011(平成23)年 名古屋松坂屋 信州の作家たち展
2011(平成23)年 熊谷八木橋デパート 第四回個展
2012(平成24)年 第六回日本橋高島屋個展「川手敏雄うつわ展」
2012(平成24)年 くましろホール 個展
2013(平成25)年 第四回飯田市美術博物館個展「皿・さら・サラ」展
2016(平成28)年 第七回 長野県飯田創造館個展「川手敏雄のやきもの展」
2017(平成29)年 リンゴ並木三連蔵・桜藏「川手敏雄やきもの展」
2019(平成31)年 第八回 長野県飯田創造館個展「川手敏雄のやきもの展」
2022(令和4)年 父と娘のホームギャラリー展
2023(令和5)年 第九回 長野県飯田創造館個展「川手敏雄のやきもの展」
2023(令和5)年 かんてんぱぱホール「川手敏雄のやきもの展」
2023(令和5)年 フランス・パリ'GALERIE PRISME' マダム・ドーフィンとの二人展
2024(令和6)年 第二回 かんてんぱぱホール「川手敏雄のやきもの展」
2024(令和6)年 第十回 長野県飯田創造館個展「川手敏雄のやきもの展」
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